通信制高校の「無償化」は授業料の支援を指す
通信制高校の「無償化」は、授業料を支援する国の制度を指す通称です。文部科学省もこの言葉を「いわゆる高校無償化」と表現しており、法律の正式な名前ではありません。
正式な名前は高等学校等就学支援金
制度の正式な名前は高等学校等就学支援金といいます。国公立と私立のどちらの高校に通う生徒も対象で、全日制・定時制・通信制の課程ごとに支給の上限額が決められています。通信制高校の生徒も、全日制の生徒と同じ制度の中で支援を受けます。
支援されるのは授業料の一部または全部
就学支援金は、授業料の一部または全部を公費で支援する仕組みです。2026年度からは、公立・私立の高校分を国が4分の3、都道府県が4分の1負担しています。上限額より授業料が安ければ授業料の全額が支援され、上限額より高ければ差額が家庭の負担になります。支援の範囲は授業料に限られるため、入学金や教材費などは別に用意しなければなりません。
お金は学校が受け取り授業料に充てる
就学支援金は、家庭の口座に振り込まれるお金ではありません。学校の設置者が生徒の代わりに受け取り、そのまま授業料に充てます。家庭から見ると、学校から届く請求額が支援の分だけ少なくなる形です。
ただし、先に授業料を全額納めてもらい、あとから就学支援金の分を返す方法をとる学校もあると文部科学省のQ&Aに書かれています。入学時にまとまったお金が必要かどうかは、学校に返金の時期とあわせて確かめておきましょう。
2026年度の制度改正で何が変わったか
2026年4月の改正で、所得制限の撤廃と私立の上限額の引き上げが行われました。通信制高校に関係する変更点を5つに分けて見ていきます。
所得制限がなくなり、どの年収の世帯も対象になった
改正前は、世帯の年収によって支給額が変わり、年収910万円程度を超える世帯は対象外でした。新制度の資料には所得制限が「なし」と明記されており、年収にかかわらず同じ上限額で支援を受けられるようになりました。
私立通信制は最大29万7,000円から33万7,200円へ
私立の通信制高校に通う生徒の上限額は、年収590万円未満の世帯でも29万7,000円でした。590万円以上910万円未満の世帯は11万8,800円にとどまっていたため、この層ほど改正の影響が大きくなります。2026年度からは、どの世帯も年33万7,200円が上限です。

年収590万円以上910万円未満の世帯では、上限額が21万8,400円増えた計算になります。910万円以上の世帯は、これまで対象外だったところから支援を受けられるようになりました。
公立通信制の6,240円は変わっていない
一方で、公立の通信制高校の上限額は年6,240円のままです。公立通信制の授業料はもともと低く、上限額は授業料相当額に合わせて決められています。2026年度の改正では、所得制限はなくなりましたが金額は変わっていません。
「2026年度から支援が拡充された」という話は、私立に通う家庭や、これまで所得制限で対象外だった家庭に当てはまるものです。公立通信制に通う家庭では、年収910万円程度を超える世帯を除けば、改正の前後で負担はほとんど変わらないと考えてよいでしょう。
国籍・在留資格の要件ができた(在校生は経過措置)
新制度の対象は、日本国内に住所があり、日本国籍を持つ生徒か、特別永住者や永住者などの在留資格を持つ生徒です。「留学」などの在留資格の生徒は新制度の対象外になりました。
ただし、新制度の対象外になる生徒でも、2026年3月31日以前から在籍している在校生は、経過措置で所得に応じて旧制度と同じ水準の支援を受けられます。4月以降に入学した新入生で新制度の対象外になる場合も、在留資格が「留学」の生徒を除き、世帯の年収などの要件を満たせば所得に応じて「高校生等・新修学支援」という別の支援の対象になります。
新しい制度は3年以内に見直される
新制度の資料には、法律の施行後3年以内に十分な検証を行い、必要な見直しをすると書かれています。上限額や対象者は今後も変わる可能性があるため、入学を考える年度の案内で金額を確かめることが大切です。この記事も、文部科学省や都道府県の公表に合わせて内容を更新します。
私立通信制の上限は全日制より12万円低い
私立通信制の上限は年33万7,200円で、私立全日制の45万7,200円より12万円低い金額です。報道で目にする金額は、多くの場合、通信制ではなく全日制の数字を指しています。
報道の「45万7,200円」は私立全日制の金額
2026年度の改正で話題になった45万7,200円は、私立の全日制高校に通う生徒の上限額です。文部科学省の資料には、私立の通信制課程に通う生徒の上限額は33万7,200円と注記されています。全日制だけを見て計算すると、通信制では支援額を多く見積もってしまいます。

通信制は月2万8,100円×12か月で計算する
私立通信制の上限額は、月2万8,100円を12か月分支給するという計算で決まっています。定額制の授業料の学校なら、月2万8,100円を下回る部分まで授業料が支援され、上回る部分が家庭の負担として残ります。
単位制の学校は1単位あたりの授業料で負担が変わる
通信制高校には、履修する単位数に応じて授業料が決まる単位制の学校も多くあります。この場合の支給は1単位あたり1万3,668円が上限で、年間30単位、通算74単位までが対象です。
1単位の授業料が1万3,668円以下なら、年間30単位・通算74単位・48か月の範囲で授業料の負担は実質的にかかりません。上回る学校では、1単位ごとの差額に履修した単位数をかけた分が自己負担になります。この範囲を超えて履修した単位は、支援の対象外となります。支給の上限を公立と私立で並べると、次のとおりです。
表の金額は、文部科学省「高等学校等就学支援金・新制度の概要」(令和8年6月16日公表)で確認したものです。
自己負担はいくら?3つの例で計算
授業料の自己負担は、学校の授業料から就学支援金の上限を引いた差額で決まります。仮の授業料を置いて、私立通信制の3つの例で計算してみます。
例1:定額制で月3万円の学校
授業料が月3万円なら、1年で36万円です。就学支援金は年33万7,200円まで出るため、授業料の自己負担は年2万2,800円になります。月あたりでは1,900円の差額です。
例2:単位制で1単位1万2,000円の学校
1単位の授業料が1万2,000円で、1年に20単位を履修すると授業料は24万円です。1単位の授業料が上限の1万3,668円を下回っているため、授業料の全額が支援され、自己負担は0円になります。
例3:単位制で1単位1万8,000円の学校
1単位の授業料が1万8,000円で、1年に20単位を履修すると授業料は36万円です。支援は1万3,668円×20単位の27万3,360円までなので、授業料の自己負担は年8万6,640円になります。
どの例でも、ここに入学金や教材費などの授業料以外の費用が加わります。授業料の金額は学校ごとに違うため、気になる学校の募集要項で定額制か単位制か、1か月または1単位あたりの金額を確かめてください。学費の総額は、通信制高校の学費の記事で公立と私立に分けて試算しています。
授業料と上限額を比べてみる
気になる学校の募集要項を取り寄せ、授業料が定額制か単位制か、1か月または1単位あたりの金額を確認しましょう。月2万8,100円、1単位1万3,668円を超える部分が自己負担の目安になります。
無償化の対象にならない費用
就学支援金で支援されるのは授業料だけです。通信制高校に通うときには、授業料のほかにもいくつかの費用がかかります。

入学金・施設設備費・教材費
入学金は、入学のときに一度だけ支払う費用です。金額は学校ごとに異なり、就学支援金の対象にはなりません。施設設備費や教材費も同じ扱いで、学校によっては毎年かかります。
教材費の中には、タブレット端末の購入費やオンライン学習の利用料が含まれる場合もあります。授業料以外の費用がいくらかかるかは、募集要項の費用一覧で確認するのが確実です。
スクーリングの交通費と宿泊費
通信制高校では、決められた日数だけ校舎に通って授業を受けるスクーリングがあります。通う校舎が遠い場合や、数日間の集中スクーリングで宿泊が必要な場合は、交通費や宿泊費がかかります。
これらも就学支援金の対象外です。住まいから近い場所でスクーリングを受けられるかどうかは、学校選びの段階で確かめておくと負担を抑えられます。
サポート校の費用は制度の対象外
サポート校は、通信制高校の生徒の学習や生活を支える民間の教育施設です。通信制高校とは別の存在で、文部科学省もサポート校は就学支援金の対象ではないと明記しています。
サポート校を併用すると、通信制高校の学費とは別に、サポート校の授業料などがかかります。説明会などで両方の費用がまとめて案内されることもあるため、どこまでが通信制高校の学費で、どこからがサポート校の費用なのかを分けて聞いておきましょう。
都道府県の上乗せ支援も確かめる
国の就学支援金とは別に、都道府県が独自に授業料や入学金を補助している場合があります。対象になるかは、住んでいる場所と学校の所在地や認可した自治体で決まることが多く、要件は都道府県ごとに違います。
愛知県は通信制の入学納付金も補助する
愛知県は2026年度、県内の私立高校に在籍する生徒を対象に、所得制限なしで入学納付金を補助しています。通信制課程の補助の上限は3万4,000円で、2026年度からは県内に住んでいる要件もなくなりました。県の案内では、通信制の授業料の補助上限も年33万7,200円と示されています。
東京都は都外で認可された通信制向けの助成がある
東京都には、都内に住み、東京都以外の自治体が認可した私立通信制高校に通う生徒の保護者を対象にした授業料の助成金があります。2025年度は、国の就学支援金と合わせて最大27万6,000円まで助成され、申請は毎年10月の1回でした。
2026年度は、国の就学支援金と合わせた上限が33万7,200円とされ、国の上限と同じ額になりました。都のページでは、国の就学支援金で授業料が全額まかなわれる場合は助成金が0円になり、申請も不要と案内されています。2026年度の申請時期は例年と異なり、詳細は決まりしだい都が案内するとしています(2026年9月24日時点)。入学金や施設整備費、サポート校の受講料は、この助成の対象外です。
大阪府は指定された学校に通う府民が対象
大阪府の授業料の支援は、原則として生徒と保護者が府内に住み、府が指定する「就学支援推進校」に在学していることが条件です。2026年度の推進校には通信制高校も含まれ、府内の12校に加えて滋賀県・兵庫県・和歌山県の学校が1校ずつ指定されています。
住んでいる都道府県の制度の調べ方
都道府県の上乗せ支援は、私立学校を担当する課(私学振興課など)のページに載っていることが多いです。申請の時期が国の就学支援金と違う場合があるため、制度があるかどうかとあわせて、いつ・どこに申し込むのかを確かめておきましょう。入学を考えている学校に聞くのも確実な方法です。
授業料以外を支える高校生等奨学給付金
授業料以外の費用には、就学支援金とは別に高校生等奨学給付金という支援があります。返還する必要のない給付金で、教科書費や教材費などに充てることができます。
対象になる世帯と通信制の給付額
奨学給付金の対象は、生活保護を受けている世帯や住民税の所得割が非課税の世帯などです。通信制課程の給付額は全日制より低く設定されており、非課税世帯で国公立なら年5万500円、私立なら年5万2,100円となっています。

2026年度に対象の世帯が広がった
2026年度からは、対象になる世帯の範囲が広がりました。文部科学省の案内では、年収270万円以上380万円未満の世帯と、380万円以上490万円未満の世帯が拡充の対象として示されています。対象になる世帯の範囲は、生徒の国籍や在留資格によって異なります。年収は、両親のどちらか一方が働き、高校生1人と中学生1人がいる4人世帯の目安です。
実際の判定は、保護者の住民税の所得割額で行われます。目安の年収に近い家庭は、マイナポータルなどで所得割額を確認しておくと判断しやすいでしょう。
申請先は住んでいる都道府県
奨学給付金は、住んでいる都道府県か、通っている学校に申し込みます。就学支援金とは別の手続きで、自動的には支給されません。新入生は4〜6月に一部を早めに受け取る申請ができる場合もあるため、入学が決まったら学校からの案内を確認しておきましょう。
支援される範囲を診断する
自分のケースで何が支援され、何が自己負担として残るのかを確かめられるよう、5つのパターンで整理しました。いちばん近いものを選んでください。
あなたのケースに近いものを選んでください
公立の通信制高校に通う
授業料は、月520円(年6,240円)の授業料相当額が支援されます。入学金や教材費、スクーリングの交通費は自己負担として残ります。
私立の通信制高校(月ごとの定額制)に通う
月2万8,100円、年33万7,200円までの授業料が支援されます。これを超える授業料と、入学金・施設設備費・教材費などは自己負担です。
私立の通信制高校(単位制)に通う
1単位あたり1万3,668円まで、年間30単位・通算74単位までの授業料が支援されます。1単位の授業料がこれを超える場合は、差額に履修した単位数をかけた分が自己負担になります。
私立の通信制高校とサポート校を併用する
通信制高校の授業料は、定額制か単位制かに応じて上の2つと同じように支援されます。サポート校の費用は就学支援金の対象外で、全額が自己負担です。
全日制の高校から転入・編入する予定
支給期間は48か月から、全日制で受給した月数を4/3倍した月数を引いた残りになります。卒業までに支給期間を超える場合は、学び直しの支援について学校や都道府県に確認してください。
世帯の状況によっては、授業料以外の費用に高校生等奨学給付金を使える場合があります。
費用の内訳を分けて聞く
説明会や個別相談では、通信制高校の学費とサポート校の費用、入学金や教材費を分けて見積もってもらいましょう。支援の対象になる部分とならない部分が分かると、実際の負担を比べやすくなります。
支援を受けるための申請手続き
所得制限がなくなったあとも、就学支援金を受けるには申請が必要です。申請が遅れると支給が始まる月も遅れるため、入学前から流れを押さえておきましょう。
申請した月から支給が始まる
文部科学省のQ&Aでは、就学支援金の受給資格を得るための申請が必要で、原則として申し込みをした月から支給が始まると説明されています。申請が遅れた月の分は支給されないおそれがあるため、入学後に学校から配られる案内に沿って、期日までに手続きを済ませることが大切です。提出が遅れそうなときは、早めに学校や都道府県に相談してください。

オンライン申請と学校ごとの書類
日本国籍の生徒は、e-Shienというオンラインの申請システムを使って申請できます。ただし、手続きの方法や提出する書類、提出期日は学校や都道府県によって異なります。申請書などの書類は、入学説明会や入学後に学校から受け取る流れです。申請の時期やe-Shienの手順は、通信制高校の就学支援金の記事で詳しく解説しています。
休学するときは支給停止の申し出をする
休学中に授業料がかからない場合は、学校に支給停止を申し出ることで、その期間を支給期間の計算から外せます。申し出をしないと、休学した月も支給期間として数えられてしまいます。復学したら、支給を再開するための申し出も必要です。
全日制から転入した場合は受給した月数に注意
全日制の高校から通信制高校へ移る場合は、支給期間の計算に注意が必要です。支給期間は全日制が36か月、通信制が48か月で、全日制に在学した月数を4/3倍した月数が、通信制の期間から差し引かれます。
文部科学省のQ&Aでは、全日制に20か月在学した場合の例が示されています。この場合は20か月×4/3=約26.7か月の端数を切り捨てた26か月を48か月から引き、通信制では22か月分が支給される計算です。中退して再入学した人が支給期間を超えて在学する場合には、学び直しのための支援制度が用意されています。
入学前に手続きの時期を確かめる
就学支援金と奨学給付金は、申し込み先も時期も別です。入学を考えている学校に、申請の案内がいつ届くか、オンライン申請に対応しているかを事前に聞いておくと安心です。
よくある質問
最後に、通信制高校の学費と支援制度についてよく寄せられる疑問に答えます。
通信制高校の学費は本当にかからなくなる?
授業料は、就学支援金の上限額の範囲で支援されます。授業料が上限額以下の学校なら、支給期間と単位数の範囲内で授業料の負担はなくなりますが、入学金や教材費、スクーリングの費用などは残ります。費用のすべてがかからなくなるわけではありません。
年収が高い家庭も支援を受けられる?
受けられます。2026年度から所得制限がなくなったため、年収910万円程度を超える世帯も対象になりました。私立通信制なら、年収に関係なく年33万7,200円が上限です。
他の都道府県の学校に通っても対象になる?
対象になります。就学支援金は国の制度なので、住んでいる都道府県と別の都道府県にある学校に通う場合でも支援を受けられます。広域通信制の学校に入学する場合も同じ扱いです。都道府県の上乗せ支援は要件が別なので、個別に確かめてください。
公立と私立では実際の負担はどれくらい違う?
公立通信制は授業料がもともと低く、就学支援金で授業料相当額が支援されます。私立通信制は授業料が学校ごとに大きく違い、上限額を超える部分は家庭の負担です。実際の差は、学校ごとの授業料と授業料以外の費用を合わせて比べると見えてきます。
就学支援金は家庭の口座に振り込まれる?
振り込まれません。学校が生徒の代わりに受け取り、授業料と相殺します。先に授業料を全額納め、あとから差額が返ってくる学校もあるため、入学前に支払いの流れを確かめておくと安心です。
奨学金や学校の授業料減免と一緒に使える?
原則として一緒に使えます。学校が授業料を減免している場合は、減免後の授業料に就学支援金が充てられます。民間団体の奨学金には併用を認めないものもあるため、それぞれの募集要項で確かめてください。
すでに高校を卒業していても対象になる?
対象になりません。高校などをすでに卒業した人は就学支援金の対象外です。科目履修生や聴講生も対象になりません。高校を中退して再入学する場合は、支給期間の残りと学び直しの支援を学校に確かめましょう。
サポート校の費用に使える支援はある?
サポート校の費用は、就学支援金の対象になりません。東京都の通信制向けの助成金でも、サポート校の受講料は対象外とされています。ほかの自治体の制度を使えるかは、住んでいる都道府県や市区町村の窓口に問い合わせてみてください。
まとめ
2026年度の改正で、就学支援金の所得制限がなくなり、私立通信制高校の授業料はどの世帯でも年33万7,200円まで支援されるようになりました。ただし、この金額は全日制の45万7,200円より12万円低く、公立通信制の6,240円は変わっていません。
入学金や教材費、スクーリングの費用、サポート校の費用は支援の対象外です。授業料以外の費用には奨学給付金や都道府県の補助を使える場合があるため、就学支援金と合わせて申請を確認しておきましょう。気になる学校が見つかったら、募集要項を取り寄せて、授業料とそれ以外の費用を分けて計算してみてください。